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研究内容

 我々の研究室は1996 年に産声を上げました。 物置のような部屋にクリーンベンチとCO2 インキュベーターがある だけでした。生まれたての研究室は極貧で年度末には実験もできない ような状況が続きました。しかし、志を忘れることはなく、徐々に成長 してきました。

 今年で12 年目、人間にたとえると中学入学を迎える年であり、 肉体的な変化は目覚しく、精神的な感化を受けやすい年ごろです。 これから数年間が研究室の成長にとって、とても大切だと思います。

 『言志録』第10 条 「人は須らく自ら省察すべし。天何の故にか我が身を生出し、 我れをして果して何の用にか供せしむる、と。」に記されているように、 ” why you are here” の精神を忘れることなく精進していきたいと 思っています。5年後、10 年後、いや明日、明後日にエキサイティング な結果がでますように祈りつつ・・・。

【テーマ1】眼感染症の病態解明と新規治療法の解明

 ソフトコンタクトレンズ装用者の感染性角膜炎や内眼手術後の眼内炎などの眼感染性疾患は非常に重篤な疾患であり、また近年増加していきています。
 本研究室では、これらの眼感染症の病態の解明と抗生物質に頼らない新しい治療法の開発のための研究を行っています。特定の細菌を溶菌するウイルスである「バクテリオファージ」という細菌の天敵を利用して、細菌感染症の新しい治療薬の開発を目指しています。
 また様々なサイトカインの遺伝子や特定の細胞を欠損したマウス(ノックアウトマウス)に、緑膿菌やブドウ球菌などの細菌を眼に感染させて、眼感染症の病態を詳細に解析することによって、細菌の排除・生体防御に必要な細胞や因子を解明することを目標としています。

【テーマ2】ぶどう膜炎の発症メカニズムの解析

 ヒトぶどう膜炎の動物モデルである実験的自己免疫性ぶどう膜炎についての基礎研究や発症機序について研究を行っています。
 T細胞、マクロファージやそれらに関与する物質をターゲットとした免疫抑制について研究を進め、新たな治療法につなげていくことに取り組んでいます。

【テーマ3】アレルギー性結膜疾患の病態解明および新規治療法の開発

 培養細胞や動物モデルを用いてアレルギー性結膜炎の重症化の発症機序について研究を行っています。
 アレルギー反応を引き起こすブタクサやスギ花粉を使用し、アレルギー性結膜炎の重症化ではどのようなメカニズムで結膜に好酸球が浸潤するのか、またT細胞がどのように働いているのかを解析しています。
 またアレルギーの原因抗原、アレルゲンをお米の食べる部分に発現させた遺伝子組換え米を食べることで、アレルギーの発症予防や治療に応用する共同研究を行っています。

【テーマ4】眼科領域の自己免疫病発症メカニズムと治療法の研究、および 眼球における骨髄由来細胞の研究

眼科領域の自己免疫病発症メカニズムと治療法の研究
 ヌードマウスの腎臓皮膜下にラットの胸腺原器を移植しておく(TG ヌードマウス)と、ラット由来の細胞は胸腺上皮細胞のみとなり、マウス由来のT 細胞が産生され、機能的な免疫系が形成されます。しかしながらこのマウスには多臓器に自己免疫病が自然発症します。眼科領域では網膜、ぶどう膜、角膜、涙腺、松果体に激しいリンパ球の浸潤が見られ、それぞれの組織と反応する自己抗体が検出できます。このモデルを用いて自己免疫を抑制する制御性T細胞がどのように産生されるか、制御性T細胞を用いて自己免疫病の治療法を検討します。


眼球における骨髄由来細胞の研究
 最近の研究で骨髄由来の細胞はあらゆる臓器に浸潤し、免疫系細胞のみならず筋組織、間質細胞や大脳グリア細胞など種々の細胞に分化可能であり、臓器再生に骨髄細胞が関与していることが明らかとなってきました。眼球を取り巻く強膜や脈絡膜、あるいは角膜の間質部位にも骨髄由来の非免疫系細胞が集積することが分かってきました。これらの細胞は上皮細胞が機能的に働くことを誘導しているようです。

【テーマ5】充血の客観的評価システム開発

 結膜充血は多くの眼疾患で生じる他覚所見です。患者さんも充血の程度を非常に気にしています。そのため、充血を評価することは疾患の重症度判定、治療効果判定や薬効評価だけでなく、患者さんの治療に対する満足度の評価においても重要です。現在の眼球結膜充血の評価は、アレルギー性結膜疾患診療ガイドラインに基づく評価判定基準(スコア分類)を用い、血管拡張の程度からスコア-、スコア+、スコア++、スコア+++の4段階で評価しています。この方法は検者による主観がはいるため、評価の定量性・再現性に問題があるだけでなく、わずかな充血の所見の変化をとらえることは困難です。そこで我々は前眼部写真から血管占有面積を測定することで充血を客観的、定量的に評価できる汎用性のあるソフトを眼科医療機器大手メーカーニデック(株)と共同して開発しました。現在このソフトを用いた臨床研究、ツカザキ病院眼科人工知能チームと共同してAIで結膜充血の重症度を正確かつ客観的に自動判別するシステムの開発をおこなっています。

【テーマ6】アレルギー性結膜疾患の有病率と環境因子との関連に関する調査(エコチル調査in高知)

 我が国全人口の約2人に1人が何らかのアレルギー疾患に罹患し、その発症も若年化しています。国もアレルギー疾患に対する基本指針やアレルギー戦略を策定しています。眼科においても花粉症をはじめたとしたアレルギー性結膜疾患の増加が問題となっていますが、子供の有病率や経時的変化はまだ明確ではありません。アレルギーは遺伝的な背景と環境因子が絡まって発症します。発症のメカニズムや原因を正確に知るには膨大なサンプルやデータが必要です。そんな中2010年度に環境省が大規模な国家プロジェクトであるエコチル調査(「子どもの健康と環境に関する全国調査)の愛称」が始まりました。エコチル調査では環境中の化学物質による子どもの健康への影響を明らかにするため、赤ちゃんがお母さんのお腹にいるころから13歳になるまでの健康状態を確認しています。全国15か所の拠点で10万組を超える親子が参加し、四国では高知県が唯一の拠点となっています。2014年10月からは、エコチル調査の全国の参加者10万人のうち、5000人を対象に詳細調査を行っています。エコチル調査で得られる10万人のデータは、アレルギー疾患発症の手がかりを得るために必要不可欠です。また、日本アレルギー学会認定の専門医は全国に3791名おりますが、うち眼科医は全国で22名(2019年7月現在)しかいません。うち3名が高知大眼科におり、当科はアレルギー診療を得意としています。そこで我々はエコチル調査(詳細調査)の追加調査として環境医学教室と共同し、2019年5月からアレルギー性結膜疾患の有病率と環境因子との関連に関する調査を行っています。
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